私が空き家問題に関心を持つことになったのは約3年前。とある不動産屋のおじさんから、フリーペーパーを作りたいという相談を受けて、その打ち合わせに行った。そのおじさん、とにかくすごい勢いで喋りまくる。私が今まで出会った中でも、指折りのマーケッターと言っても過言ではないほどおじさんの情報量はすごかった。数回打ち合わせに行ったけれど、おじさんの話を聞きに行っているようなものだった。とは言ってもとにかくおじさんは話がうまい。少子高齢化問題、東京の不動産事情、これからの不動産予測、タワマン事情、建築関係の仕事のこれから…と、日頃はお金をもらってコンサルや講演をしているおじさんは惜しみなく私一人に対して喋りまくってくれた。とは言っても、なんとなくそのおじさん、風貌からいうと胡散臭い感じもあったので、全てを鵜呑みにするのではなく帰ってからおじさんの話を検証する作業も必要だった。
調べてわかったのは「私の頭の中はお花畑だった」ということ
おじさんの話が嘘か本当か調べていくうちに日本はこのままではヤバイ…いや、ヤバすぎる… という現実が見えてきた。日本の未来はどうなるんだろう?おじさんの話をもとに、経済や政治、不動産事情などをどんどんと掘り下げていくと日本は問題、課題が山積みで大変なことになっている。なんとなくの情報としては知ってはいたけど、ここまでいろいろと切迫している状況とは恥ずかしながら私は知らなかった。
タワマンの話で言えば、初期の頃に建ったタワマンは悲惨なことになっているという。高値で買ったタワマン、経済状況の悪化で支払えず売ろうとしても安くでしか売れない、ローンだけが残りかつて贅沢な暮らしをしていた人たちが悲惨な生活を送っている人が結構いるとおじさんは言っていた。また、戸数が多いため立体駐車場などが壊れても使っていない人たちは修理をするのを嫌がり壊れたまま使われていないところがあったり、共用部分で賑わっていたマンションの売りであったジムなどもメンテナンス代が掛かるのでチェーンが掛かって使われなくなっていたり…そんなことになっていると言っていた。調べていくと、タワーマンションは外壁などの改修工事をできるところもほとんどないらしく、また投資のために購入した外国人所有者が中に結構いるため意見がまとまらずちょっとした改修工事なども進まないなどという問題もあるらしい。将来は、もしかしたら映画で見たような悲惨なゴーストマンションになりかねないのだとか…
他にも、空き家を意識して街中を歩き回ってみると、あそこも、ここも…と空き家がやたらと目につくようになった。特に目につくのは家の中に物が置かれたままの空き家。考えるに、持ち主さんが施設に入ったり病院に入ったり、はたまた亡くなってしまったような事情があり長年放置されていることが多そう。家主さんの子どもたちは、すでに自分たちで家を買って持っているので、親の家をなんとかしないと…と思いながら、親の荷物がいっぱい残っているため、リフォームしてなんとかしたくてもお金も掛かるし、どこに発注していいのかもよくわからない、自分たちにも生活があるからそこまで手も回らずそのまま手付かず…というような物件が多いのではないかと思われる。
また、おじさんが言っていたのは、新築は減っていくから、これからはリノベーションの時代が来ると言っていた。私の旦那はシンガーだけど、建築の仕事もしている。旦那の仲間たちも仕事が激減してはみんな生活が困ってしまうだろう…と心配になった。建築関係の人たちにいろいろと聞いてみて分かったのは、大工さんでもリノベーションができる人は意外と少ないという。特に最近の大工仕事は昔と違って分業化されてしまって、自分の専門以外のことはやらない、知らない大工さんが多いらしく、多能工(マルチスキル)の人が少なくなっているということが分かった。そしてトータルして教えられる人が少ないらしい。どうすればいいんだろう…
結局、私と数回打ち合わせをしたものの、おじさんは自分の講演や講座、不動産コンサルの仕事が忙しくなりすぎ、フリーペーパーの企画は流れてしまった。しかし、その数回の打ち合わせで私は本当に多くのことを学ばせてもらい、お仕事以上のものをいただいた。
さて、どうするか?
おじさんと出会った後、建築関係のHPの制作のお手伝いなどをするうちにますますリノベーションのことが気になり始めた。そんな時に出会ったのが、リノベーションを得意としているという多能工の大工さん。すぐに捕まえて東京で教えられないか?と打診してみた。その大工さんと1年間共に走り続けた。DIYで解決できることが沢山あることを勉強もさせてもらった。カフェのリノベーションも大工さんと一緒に施工させてもらった。これからという時に、コロナで決まりかけていた仕事や全ての活動がストップし、多能工大工さんは東京での活動をやめて関西に戻った。
不動産屋のおじさんから聞いた話は、3年経った今でも時々思い出す。おじさんが言っていたことは、コロナのせいで前倒し状態でやってきた。
コロナで住まいを失う人たちがたくさんいる。それなのに、日本の中には空き家が山のようにある。そして、空き家を持て余している人たちが沢山いる。いろいろな意味で全然優しくない。もっと楽しく、明るく、優しく、かっこよく、空き家問題を解決していく術はないのか?いろいろと考えてみた。机上の空論では何の説得力もない。旦那と話し合い、まずは自分たちでやってみたらどうか?と一歩踏み出すことにした。
というわけで、設計図のない私たちのセルフリノベーション物語が始まった。
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